☆彡ガトー・オ・ポム・ノワの生まれた朝
数日前のことになりますが、
「りんごとくるみのケーキ」
を購入しました。不思議なことに、このお菓子だけは
お菓子の名前と、箱に書かれている文字が違うのですね。
箱には Gâteau aux pommes noix
とフランス語で表記されています。
Gâteau(ガトー):ケーキ
aux(オ):〜入りの
pommes(ポム):りんご
noix(ノワ):クルミ(ナッツ類)
この名前を見たときに、
瞬間的にひらめいてしまったことがあるのですが、
今日は、ガトー・オ・ポム・ノワの私なりの理解を形にするため
以下のようなストーリーを考えてみました。
ある果樹園に、ひときわ美しく色づいたりんごの娘・ポムがいました。
彼女は陽の光をその身いっぱいに受け、
赤く甘く、見た目も香りも申し分のない存在。
誰もが憧れ、鳥たちは歌い、風は彼女のまわりで踊りました。
けれど、ポムは笑いながらも、心のどこかが冷たく空いているようでした。
自分を愛してくれる人たちは、本当に自分の中身を見てくれているのだろうかと。
誰もが彼女の「甘さ」を求めるけれど、その奥にある酸味やざらつきは、
だれにも知られることなく、静かに時が流れていきました。
一方、森のはずれに、年老いた旅人のようなクルミの実がひとつ。
それがノワでした。
ノワは若いころ、あちこちの土地に転がり、
ときには踏まれ、ときには割られ、ときには見向きもされず、
それでも心のどこかで「本当のつながり」を探し続けていました。
殻は硬く、身は小さく、派手さもなく、甘さもない。
それでも彼は、苦みや渋みの奥に、真実があると信じていました。
ある日、ひとりの菓子職人が、偶然ふたりを拾い上げました。
傷ついたノワと、完璧に見えるポム。
ふたりのあいだに何かがあるとは、誰も思わなかったでしょう。
でも、焼かれていく生地のなかで、
ポムはノワの香ばしさにふと安らぎを感じ、
ノワはポムの甘さの奥に潜んだ微かな酸味に、誠実さを見出しました。
「あなたは、ただ甘いだけじゃなかったんだね」
「あなたは、ただ苦いだけでもなかった」
語り合うわけでも、寄り添うでもなく、
ふたりはただ、熱に包まれ、ゆっくりと重なり合っていきました。
それは恋というよりも、帰る場所を見つけたような静けさでした。
こうしてできあがったのが――
ガトー・オ・ポム・ノワ。
外から見れば、ただの素朴な焼き菓子かもしれない。
けれど、その中には、
見た目ではわからない二つの孤独が、そっと寄り添っているのです。
こんな感じです。
で、この物語を読んで、
あの人はポムに似ているなと、ふと思いました。
まわりの人にとっては、明るくて、優しくて、愛される存在。
でもきっと、その奥にある静かな強さや繊細さを、
本当に見つけられる人は、そんなに多くないのかもしれません。
なんてね。
いつか一緒にブルターニュに行ってみたい気がします。
そんなこと、あるわけないよなあ…と思いつつ。
でも、世の中とは不思議なもので、
もし仮に——
二人が同じ会社の社員で、
新規商品開発のための調査旅行の社命をうけていたとしたら。
それはもう、
仕方ない。行くしかない。
あくまでも社命ですから・・
そう言いながら、
ノワは内心めちゃ嬉しいわけです。