☆彡思い出の回廊Ⅱ — 僕の ・・・ って言ったよね

昨火曜日は、祝日だということに朝になって気づき、でもその流れで大学に出てきてレポートの採点をする傍ら

なんと・・

「思い出の回廊 — 同級生のレイとハクショウ」の続編を考えてみました(汗)。

前回のあらすじ

思いがけず生徒会長となったレイは、ハクショウに副会長への就任を打診する。レイの秘めた好意を見透かし「彼女になる自信はない」とかわすハクショウ。しかしレイの言葉は真っ直ぐだった。「僕の求めているものは、それよりももっと確かなものだから」。恋人という名前のついた関係性ではなく、互いを根底から認め合い、共に歩む唯一無二の存在として隣にいてほしい。軽妙なやり取りの中に、既存の言葉では表せないほどの深い結びつきと、揺るぎない信頼が垣間見える。——ところで、肝心の副会長就任の返事は?

・・

「いや、その、まだ返事をきいていないんだけど・・・」

「返事の前に、まずは抱え込んでいる厄介事を吐き出してみなよ。どうせ、もう具体的な問題が起きて頭を抱えてるんでしょ? だからこんなに焦って私を引っぱり込もうとして・・・ でしょ?」

図星を突かれ、レイは小さく息を吐いて苦笑した。
「やっぱり、君には敵わないな。実はね、さっそく火種が持ち込まれたんだ」

レイは周囲に人がいないことを確認すると、声を一段階落とした。
「選挙戦で僕と争って負けた塚原、いるだろう? 彼女が突然『新聞局を設立したいから予算をつけてくれ』と要求してきたんだ。しかも、直接じゃなくて、生徒会担当教諭を通じてね」

「はあ? あの塚原が?」

ハクショウは呆れたように眉をひそめた。
「選挙のとき、職員室と結託して、さんざんレイに汚い嫌がらせをしてきた塚原が、今度は言論の場を作れって?」

「そう。しかも『局』としての設立だから、部活動よりも上位の組織として独立した権限とまとまった予算を要求してきている」

ハクショウは小さくため息をついた。
「・・・ 露骨すぎるね。生徒会とは別の公式な情報発信源を作って、レイの足を引っ張る気満々じゃない」

「僕は引っ張られてもいいと思っているんだけど ・・・」

「よくないよ。せっかく選ばれたんだから、ちゃんとしなよ」

レイが冗談めかして言うと、ハクショウはピシャリとたしなめた。

「で、どうするの? むげに断れば『言論の自由を弾圧する』って騒ぎ立てる気なんでしょ?」

「多分ね。かといって、要求を丸呑みするとなると審議事項になるし」

「なら、設立はさせてあげればいいじゃない」

ハクショウは少し悪戯っぽく微笑んだ。

「いきなり特権のある『局』じゃなくて、まずは『新聞同好会』からスタートしてもらうの。で、ちゃんと新聞を発行して、みんなに読まれるっていう実績を作ってもらう。予算もそれに応じて少しずつ、って形にすれば、誰も文句言えないでしょ?」

「なるほど。言論の場は提供するけど、特別扱いはしないと・・・ 」

「そう。あと、先生たちが裏で糸を引いてるのが面倒だね。生徒会の予算の使い道に大人が口出しできないように、私の方でしっかりルールを確認して、目を光らせておかないと・・・ 」

そこまで言って、ハクショウはピタリと口をつぐんだ。
目の前で、レイが満面の笑みを浮かべて彼女を見つめていたからだ。

「・・・ ちょっと。なんでニヤニヤしてるのよ」

「いや。完璧なアイデアだと思って。さすがは僕の副会長だ」

「あ」

ハクショウは小さく声を漏らし、ハッとしたように自分を指さした。

「さっき、『私の方で確認して』って言ったよね? つまり、副会長のオファーを応諾してくれたということでいいかな」

「・・・ はめられた」

ハクショウは悔しそうに唇を尖らせると、すぐにふふっと小悪魔のように笑った。
「言っておくけど、副会長になったら一番にあなたをこき使ってあげるから。覚悟してよね」

「はめてないよ。君なら絶対に、一番いい答えを見つけてくれると信じていただけさ」

レイは穏やかに笑うと、少しだけ声のトーンを変えた。
「だから、君が副会長を引き受けてくれるなら、彼らの要求、そのまま丸呑みして『新聞局』としてやらせてみようと思うんだ」

「はあ? 正気? せっかく私が安全な譲歩案を考えてあげたのに。そんなことしたら、好き放題やられるに決まってるじゃない」

「普通ならね」

「・・・ ちょっと待って。なんで私が副会長なら、要求を丸呑みするのよ?」
ハクショウがいぶかしげに目を細めると、レイは当然のことのようにさらりと答えた。

「だって、君がいれば、彼らが勝てるわけがないからね」

「・・・・・・」

虚を突かれたように言葉を失うハクショウに、レイは穏やかに、だが絶対的な信頼を込めて言った。

「僕が求めていた『確かなもの』っていうのは、きっとこういうことなのかな。相手がどんな手を使ってこようと、君が隣にいれば大丈夫だという確信。・・・  でも、君にこき使われる覚悟だけはちゃんとしておくよ、ハクショウ副会長」

「・・・ ほんと、レイって性格悪い」「わざと厄介事を抱え込んで、私が離れられないようにしたんでしょ」

「まさか。僕はただ、優秀な副会長を頼りにしているだけだよ」

涼しい顔で言い放つレイの言葉。 最初は、私を逃がさないための不器用で強烈な執着だと思った。けれど、本当にそうなのだろうか。

「彼女になる自信がない」と距離をとった私。彼が用意したこの「逃げられない厄介な現実」は、そんな私が一番堂々と、安心して彼の隣にいられるための口実なのだ。 強引に見えたそれは、恋人という言葉の重圧から私を解放し、そのまま受け入れようとする彼なりの、底知れなく深い優しさだった。

「・・・ 言っておくけど、この世の中、確かなものほど高くつくことになるから、後悔しないでね」

恨みがましい声とは裏腹に、胸の奥はじんわりと温かい。

(そういえば確かさっき、僕の ・・・ って言ったよね)

文句を言いつつ、この状況を誰よりも安堵と共に受け入れている自分がいる。不器用な理屈を並べてでも、どんな理由をつけてでも。 本当は「一緒にいたい」と強く願っていたのは――他でもない、私の方ではなかったのか。

ハクショウは小さく息をつき、隠しきれない微かな笑みをそっと零した。

☆もちろんすべてがフィクションですが、新聞局のくだりはリアルにそんなことがありました。この物語の設定としては、レイとハクショウは同級生ということになっているけど、仮に今二人が話してもこれと同じくらいの距離感だろうね。実際、店頭というものすごく制限された状況でも、時折くだけた言葉で接してくれたことがあるし、そういう制約のないところで話ができたらどんなにか楽しいだろうと思う。ただ、距離感は近くてもあなたはいつもの綺麗な言葉遣いのままなのかもしれない。それはそれで素敵ですね。